5月29日の米国株市場は、劇的な展開を迎えています。前日の調整局面から一転して、S&P500先物が力強い上昇を見せる背景には、投資家心理を一変させる2つの重要な出来事がありました。
5月28日の振り返り:調整圧力が表面化
主要指数の動向
5月28日の米国株式市場は、3連休明けの反発から一転して調整色を強めました。S&P500は前日比0.56%安の5,888.55で取引を終了し、ダウ工業株30種平均も244ドル安の42,008ドルまで下落しました。この下落は、前日の2.05%上昇の反動と位置づけられ、利益確定売りが優勢となった展開でした。
市場を圧迫した要因
FOMC議事要旨の慎重姿勢
5月6-7日開催分のFOMC議事要旨が公表され、参加メンバーの利下げに対する慎重な姿勢が改めて確認されました。関税の影響を見極めるまで政策金利変更には慎重との方針が示され、市場の利下げ期待に冷や水を浴びせる内容となりました。
金利上昇圧力の継続
米長期金利の上昇が続き、持ち高調整目的の債券売りが優勢となりました。大型減税法案をめぐる財政悪化への懸念も重なり、金利高が株式市場にとって売り要因として意識されました。
5月29日の転換点:2つのゲームチェンジャー
関税差し止め判決の衝撃
裁判所の歴史的判断
米国際貿易裁判所は5月28日、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて発動した高関税措置の多くを違法と判断し、差し止めを命じました。この判決は、トランプ政権の主要経済政策にとって大きな打撃となる内容です。
市場への即座の影響
判決が伝わると、S&P500先物は即座に反応し、午前10時頃には発表前の水準から0.7%程度高い水準で取引されました。ドル指数も0.4%上昇し、米国経済への貿易関連の逆風が軽減されるとの見方が広がりました。
エヌビディア決算が示す底堅さ
予想を上回る業績
5月28日の取引時間終了後に発表されたエヌビディアの2025年2-4月期決算は、売上高が前年同期比69%増となり、事前コンセンサスを上回る内容でした。中国向け半導体「H20」の輸出規制による影響を除けば、データセンター向けの売上高は73%増の大幅な伸びを達成しました。
波及効果の拡大
エヌビディア株は時間外取引で6%超上昇し、アップルやアマゾンなど他の大型テクノロジー株も3%超の上昇を記録しました。これらの銘柄はS&P500への影響度が大きいため、指数全体の押し上げ要因として期待されています。
テクニカル分析:重要な節目への挑戦
現在の技術的状況
5月29日のS&P500先物は5,999.00(+96.25)と、心理的節目である6,000ポイントに肉薄する水準まで上昇しています。これは前日の調整から一転した力強い反発を示しており、市場参加者の心理転換を鮮明に表しています。
重要な抵抗線とサポート
上値の重要ライン
プロのアナリストが注目する5,960-70ポイントの重要な抵抗線を上抜けて終了できるかが、今後の方向性を決める鍵となります。この水準を突破すれば、5,990-6,000ポイント、さらには6,020-30ポイントの抵抗をトライする動きへと発展する可能性があります。
下値サポートの堅固さ
下値については、5,840-50ポイントと5,800-10ポイントに強いサポートが形成されており、これらの水準を維持している限り、大幅な下落リスクは限定的とみられています。
今後の展望:不確実性の中の機会
短期的な見通し
6,000ポイント回復への道筋
関税差し止め判決とエヌビディア決算の好結果を受けて、S&P500は節目の6,000ポイント回復への期待が高まっています。ただし、この水準では利益確定売りが出やすく、一時的な伸び悩みも想定されます。
政治的不確実性の残存
トランプ政権は判決に対して即座に控訴する方針を示しており、ホワイトハウスのデサイ報道官は「あらゆる行政上の権限を用いる」と表明しています。控訴プロセス中も関税は維持される可能性が高く、法的手続きの進展が市場の新たな不確実性要因となる可能性があります。
中長期的な投資戦略
選別投資の重要性
現在の不透明な環境下では、収益性や成長性が確認された好業績企業への選別投資が引き続き有効です。特に、エヌビディアのような構造的な成長が期待されるAI関連銘柄や「マグニフィセント・セブン」への注目が集まっています。
金利動向への継続的な注視
FRBの金融政策に関する発言や経済指標の結果次第では、市場のボラティリティが高まることも予想されます。米長期金利の動向が株式市場に与える影響は依然として大きく、金利上昇局面では株式への資金流入が鈍化する可能性があります。
投資家が注目すべきポイント
今週の重要イベント
5月30日には4月の個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)が発表される予定で、インフレ動向を測る重要な指標として注目されます。また、29日には2025年1-3月期の米実質GDP改定値も発表され、景気後退懸念の再燃リスクも意識されています。
リスク管理の観点
現在の技術的状況を踏まえると、5,800ポイントを下回る場合は下値リスクが高まる可能性があるため、慎重な姿勢が求められます。一方で、新たな経済悪化要因が現れない限り、押し目買いが有効な戦略となる可能性が高く、長期投資家にとっては魅力的な投資環境が続くと予想されます。
関税差し止め判決とエヌビディア決算という2つの好材料を得た5月29日のS&P500は、新たな上昇局面への転換点を迎えているといえるでしょう。ただし、政治的不確実性や金利動向への警戒は継続する必要があり、慎重楽観の姿勢で市場動向を見守ることが重要です。
今後の上昇シナリオと反落リスクの見極めポイント
S&P500の今後の動向を左右する上昇シナリオと反落リスクについて、現在の市場状況を踏まえて詳しく分析します。
上昇シナリオの根拠
企業業績の堅調な成長
2025年のS&P500構成企業のEPS(一株あたり利益)成長率は12.9%の増益が予想されており、2026年も13.1%の増益が見込まれています。この堅調な企業業績の成長が株価上昇の最大の推進力となっています。特にAI関連企業の業績拡大が全体を押し上げる構造が継続しており、テクノロジーセクターを中心とした収益成長が期待されています。
技術的な上昇トレンドの継続
現在のS&P500は移動平均線を全て上抜けし、上昇トレンドを回復する形状となっています。10日・20日移動平均線が上向きを維持しており、基本的な上昇トレンドは継続していると判断されます。5,750ポイント付近まで押し戻された後、移動平均線がサポートとして機能し、2日連続の陽線で反発力を示しています。
政治的リスクの後退
トランプ政権の関税政策に関する修正期待や、EU向け関税の延期決定により、政治的不確実性が一時的に後退しています。米中貿易交渉での共同声明発表も、投資家心理の改善に寄与しています。
目標価格水準の分析
短期的な目標
まずは6,000ポイントの心理的節目の突破が焦点となります。この水準を上抜けて終了できれば、6,100ポイント(フィボナッチ・エクステンション100%水準)、さらに6,600ポイントまでの上昇が視野に入ります。
中長期的な見通し
プロの予想では、2025年末には6,800ポイントから7,000ポイントまでの上昇が期待されています。これは2024年の最高値から10-15%程度の上昇に相当し、企業業績の成長率と整合性のある水準です。
反落リスクの警戒ポイント
技術的な懸念材料
RSI指標の悪化
相対力指数(RSI)が70を下回っており、売り圧力の強まりを示唆しています。高値圏での技術的な調整圧力には注意が必要です。
重要なサポートライン
5,800ポイントを下回る場合は下値リスクが高まる可能性があります。さらに5,500ポイントを割り込んで終えた場合は、5,400方向への新たな下落リスクが生じます。
ファンダメンタルズ面のリスク
インフレ再燃の懸念
トランプ政策(特に関税の強化)によるインフレの再燃が最大のリスク要因です。これがマーケットのテーマに浮上すれば、FRBの利下げ停止も含めた金融政策の不透明感が高まる可能性があります。
金利上昇圧力
米長期金利の上昇が続く場合、株式への資金流入が鈍化する可能性があります。FRBの金融政策に関する発言や経済指標の結果次第では、市場のボラティリティが高まることも予想されます。
見極めのポイント
上昇継続のシグナル
- 6,000ポイントの確実な突破と定着
- 移動平均線のサポート機能の維持
- 企業決算での予想上回りの継続
- 政治的不確実性の更なる後退
反落リスクの警告サイン
- 5,800ポイントの下抜け
- RSI指標の更なる悪化
- インフレ指標の予想外の上振れ
- 関税政策の再強化
投資戦略のポイント
現在の技術的状況を踏まえると、押し目買いが有効な戦略となる可能性が高く、新たな経済悪化要因が現れない限り、長期投資家にとっては魅力的な投資環境が続くと予想されます。ただし、高値圏での利益確定売りや政治的不確実性には継続的な注意が必要で、慎重楽観の姿勢で市場動向を見守ることが重要です。
S&P500が6,000ポイント到達を目指す今後のシナリオを徹底解説
S&P500は企業業績の堅調さや米国経済の底堅さ、大型テック株の活躍、そして関税差し止め判決など政策リスクの後退を追い風に、6,000ポイント到達を強く意識した展開となっています。特にAIや半導体セクターの好業績が市場全体を牽引しており、短期的には5,960-6,000ポイントの抵抗突破が注目されます。一方で、6,000ポイント近辺では利益確定売りが出やすく、一時的な調整も警戒が必要です。中長期的には企業業績の拡大を背景に、さらに上値を目指す見方が優勢ですが、インフレ再燃や金利上昇、政治的不確実性などが反落リスクとして挙げられます。投資家は、5,800ポイントの下抜けやRSI指標の悪化などの警告サインを注視しながら、慎重楽観の姿勢で市場動向を見守ることが重要です。
S&P500の値動きは、世界経済の最新ニュースと密接に連動しています。投資家も一般読者も、経済指標と国際情勢をしっかり追い続けることが重要です。
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※本記事は情報提供を目的としており、投資の最終判断はご自身でお願いいたします。